【知ってた?】糖尿病と診断される不利益があること
こんにちは。
私は健康診断で高血糖を指摘された、という方を診察することが多いです。診断基準にあてはまらない微妙な値であることも多く、「ブドウ糖負荷試験」という精密検査を行い、糖尿病かどうかを確定する必要がある場合があるのですが、検査自体を断られることが多々あります。
最初は不思議に思っていたのですが、よくよく理由を聞いてみると、
『もし糖尿病って診断されたら、住宅ローンが通らなくなるかもしれないんですよね?』 『がん保険とか、入れなくなるって聞きました』 という話です。
残念ながらこれは本当です。
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医療者としては、なるべく早く異変を見つけて、なるべく早く治療につなげたいと思うのは当然です。 でも、その「正論」が届く前に、そもそも『診断されないようにする』という選択をする人がいます。
なぜか。それは、『診断されること自体が不利益になる社会』が、いま実際に存在しているからです。
診断がつけば、保険に入りにくくなる。ローンの審査に不利になる。 場合によっては、就職や転職で「健康状態」を理由に断られるケースもあります。 (これは実際に起きていることです!!)
特に、はたらき世代では、『糖尿病があると就職に響く』という感覚が根強くあります。 そしてその背景には、糖尿病があたかも「自己責任の病気」であるかのような偏った認識が、いまだに社会の中に残っているのも事実です。
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つまり、糖尿病を放置しているほうが、診断されて治療するよりも“社会的には得”をしてしまう局面がある、ということ。 本人にとって、医療費や制度上の不利益が大きければ大きいほど、沈黙を選ぶことが合理的になってしまう。
『早期発見・早期治療』が成立するためには、『病気が見つかっても安心して治療に入れる社会』が必要です。 ところが今の日本には、そのための制度的な土台が、まだ十分には整っていないのですね。
たとえばドイツには、糖尿病と診断された人が『疾病管理プログラム』に加入することで、定期的な治療や生活支援を受けられる制度があります。 加入者には保険料の軽減などのメリットもあり、『病気と向き合った人が損をしない』仕組みがしっかりと用意されています。
一方、日本にも「特定健診」や「特定保健指導」はありますが、それはあくまで発症前の段階の話。 診断されたあとに安心して治療に踏み出せる環境は、決して十分とは言えません。
「糖尿病ではなくダイアベティスへ」という前に、まだまだ解決すべき課題はいっぱいありそうですね!
P.S. ブドウ糖負荷試験に使う「トレーランG」を飲んだことはありますか?とっても甘いサイダーなのですが、筆者が飲んだ時は甘すぎて具合が悪くなりました。
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