糖尿病と「オランダへようこそ」
こんにちは。
みなさまは『オランダへようこそ』というエッセイをご存じでしょうか。
ほんとうはイタリアに行くつもりで楽しみにしていたのに、実際に着いたのはオランダだったというお話です。最初はイタリアにはない景色を嘆くかわりに、オランダにはオランダの楽しみがあることに気づく。風車やチューリップ、運河のある暮らしもまた素敵じゃないか、という話です。
もともとはダウン症をもつ子の親である作家エミリー・パール・キングスレイさんが書いた詩ですが、病気があるといわれ「こんなはずじゃなかった」「どうして私だけ?」と考え込んだり、落ち込むことがある人へのメッセージとして有名な詩です。
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さて、「糖尿病」と診断されたとき、正直ショックを受ける方は少なくありません。
でも、そこから歩きはじめてみると、意外と楽しめることがあるんですよね。たとえば、通院をきっかけに、むしろ体調が整ってよい人生になる。同じ境遇の人と出会って、仲間意識や安心感が得られる。もしかしたら糖尿病の発症を通して、生きがいとなる仕事を見つけることになる。
診断前には想像もしなかったオランダの景色が、そこに広がっているんです。
もちろん「イタリアに行きたかった(糖尿病をもたない人生はどうだったのか)」という気持ちは消えません。でも、オランダにはオランダの魅力があって、そこでしか見られない景色がある。糖尿病とともに歩む日々も、ちょっとした工夫でエンジョイできるんだ、と感じていただければうれしいです。
P.S. あなたは、ご自身の『オランダ』でどんな楽しみを見つけていますか?
<オランダへようこそ>
私はよく「障がいのある子を育てるのってどんな感じ?」と、聞かれることがあります。
そんな時私は、障がい児を育てるというユニークな経験をしたことがない人でも、それがどんな感じかわかるようにこんな話をします。赤ちゃんの誕生を待つまでの間は、まるで、素敵な旅行の計画を立てるみたい。
例えば、旅先はイタリア。
山ほどガイドブックを買いこみ、楽しい計画を立てる。
コロシアム、ミケランジェロのダビデ像、ベニスのゴンドラ。
簡単なイタリア語も覚えるかもしれない。
とてもワクワクします。そして、何カ月も待ち望んだその日がついにやってきます。
荷物を詰め込んで、いよいよ出発。
数時間後、あなたを乗せた飛行機が着陸。
そして、客室乗務員がやってきて、こう言うのです。
「オランダへようこそ!」
「オランダ!?」
「オランダってどういうこと?? 私は、イタリア行の手続きをし、イタリアにいるはずなのに。ずっと、イタリアに行くことが夢だったのに」でも、飛行計画は変更になり、飛行機はオランダに着陸したのです。
あなたは、ここにいなくてはなりません。
ここで大切なことは、飢えや病気だらけの、こわくてよごれた嫌な場所に連れてこられたわけではないということ。
ただ、ちょっと「違う場所」だっただけ。だから、あなたは新しいガイドブックを買いに行かなくちゃ。
それから、今まで知らなかった新しいことばを覚えないとね。 そうすればきっと、これまで会ったことのない人たちとの新しい出会いがあるはず。
ただ、ちょっと「違う場所」だっただけ。
イタリアよりもゆったりとした時間が流れ、イタリアのような華やかさはないかもしれない。
でも、しばらくそこにいて、呼吸をととのえて、まわりを見渡してみると、オランダには風車があり、チューリップが咲き、レンブラントの絵画だってあることに気付くはず。でも、まわりの人たちは、イタリアに行ったり来たりしています。
そして、そこで過ごす時間がどれだけ素晴らしいかを自慢するかもしれないのです。
きっと、あなたはこの先ずっと「私も、イタリアへ行くはずだった。そのつもりだったのに。」と、いうのでしょう。心の痛みは決して、決して、消えることはありません。だって、失った夢はあまりに大きすぎるから。でも、イタリアに行けなかったことをいつまでも嘆いていたら、オランダならではの素晴らしさ、オランダにこそある愛しいものを、心から楽しむことはないでしょう。
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